権力・権威・威力
権力
支配者が被支配者に服従を強制する力。通常は、国家が有する政治的権力を指し、究極的には物理的強制力に裏打ちされる。物理的強制力という側面では暴力と同じであるが、その行使については当事者によって正当性が承認されている点で異なる。法律と権力との関係については、権力発動が法によって規定されているという面と法律が権力によって規定される面とがある。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
権威
人に対して影響力を行使し得る力であって、その力の保持が、人格的(カリスマ的)理由や伝統的理由等によって、その社会又は集団内で正統なものとみなされているものをいう。そのような力を有する個人又はグループを権威と称することもある。法令上の用例は少ない。例、「国政は…その権威は国民に由来し」(憲法前文)、「民主社会における法の権威を確保するため」(法廷秩序一)。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
威力
人の意思の自由を制圧するに足りる勢力。物理的暴力に限らず、地位、権勢を利用した威圧的行為も含まれる(例、刑九六の三①・二三四、公選二二五、民執六①等)。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
ー国権・主権・統治権ー
国権
国家権力を指す。
統治権又は国家の主権の意(憲九①・四一、財三)。
国家の統一的な意思力という意味で用いられることもある。国家は相矛盾した意思をもつことはあり得ないのでこの意味での国権は唯一不可分であり、立法、司法、行政の区分はその作用を別個の機関に行わせたにすぎないと説かれるのはその例。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
国権
国権とは,第一に国家の意思、第二に統治権というような意味で用いられているとされ,憲法9条及び41条の「国権」は、国権の意味のうち国家の意思というような意味で用いられているとされています(内閣総理大臣 小泉純一郎「日本国憲法における国権と自衛権との関係に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一五四第一七号,2002年)参照)。
主権
主権とは,第一に国家の意思の源泉、言い換えれば国家の政治の在り方を最終的に決定する力、第二に国家の意思が最高、独立であること、第三に国家の意思、第四に統治権というような意味で用いられているとされ,「主権」という言葉のうち、前文第一段落及び第一条の「主権」は、右で述べた主権の意味のうち国家の意思の源泉というような意味で、前文第三段落の「主権」は、右で述べた主権の意味のうち国家の意思が最高、独立であることというような意味で用いられているとされています(内閣総理大臣 小泉純一郎「日本国憲法における国権と自衛権との関係に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一五四第一七号,2002年)参照)。
統治権
国家の対内的な支配権の意味に用いられる。一般には、①領土高権(国家の基礎となる一定の地域の全ての人や物に及ぶ国家の支配権)、②対人高権(領土の内外を問わず、国民に対する国家の属人的な支配権)、③自主組織権(国家がその活動組織を自らの法によって定める権利)の三つの性質の権利を含む。主権ということもある。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
ー武力・戦力・兵力ー
武力
一般的に、実力の行使を任務とする人的及び物的装備・施設の組織体をいうが、専ら国内的な関係で実力の行使を任務とするものは含まれないとするのが一般的である。憲法九条一項は、「日本国民は、…国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定している。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
戦力
戦争遂行力。対外的な戦闘を行う手段となる一切の人的・物的能力。日本国憲法は、「陸海空軍その他の戦力」は保持しないと規定する(九②)。この「戦力」の意義については、何らかの形で戦争に役立つ全ての力を含むとする説、組織的な武力又は軍事力を指すとする説等があるが、政府は自衛のための必要最少限度の実力を超える実力をいうと解している。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
兵力
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一般には、兵員、武器などの総合的な戦闘力の意。
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国際法上は、戦闘に従事できる人々の集団を指す。正規の兵力(陸軍、海軍、空軍)と不正規の兵力(民兵、義勇兵等)とに区別される。戦闘に参加し、直接敵に加害行為を加える資格があるとともに、敵の加害行為の対象とされる。
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