規範・規則・基準
規範
のっとるべき規則、あるいはある物事に対して判断、評価又は行為する場合の拠(よ)るべき基準。通常「…すべきである」、「…してはならない」というような形で表現される。その起源や違反に対する強制力の構造などによって、法、道徳、宗教等の諸規範に分類される。法は、一定の行為を命ずる行為(社会)規範であるとともに、一般に、その違反に対し何らかの公的権力を背景とした制裁を定める強制規範である。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
規則
人の行為の準則。又はそのような準則の定めに付される題名にもよく用いられる。
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基準
物事を判断するための尺度となるもの。行政機関の行う許可等の行政処分における要件として定められたものをいうことが多い。例、「内閣総理大臣は、銀行業の免許の申請があつたときは、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない」(銀行四②)。行政手続法において、許認可等の判断基準(審査基準)をあらかじめ定め、公にすることが求められる(五)。
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規準
規範となる標準。「基準」と大差ないが、規範的意味合いを出そうとするときに用いられる。また、都市再開発法(昭四四法三八)などで「規約」と同じ性質のものをいう。例、「土地の取得価格…を定めるときは、公示価格を規準としなければならない」(地価公示九)、「第一種市街地再開発事業を施行しようとする者は、一人…にあつては規準及び事業計画を定め、数人共同…にあつては規約及び事業計画を定め…」(都開七の九①)。
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準則
準拠すべき法則の定め。「給与準則」(一般職の国家公務員の給与について準拠すべき規程)(退職手当五の二)のほか、「農林水産大臣が定める準則」(農災一〇九④)、「受託契約準則」(商取五の二②)、「債権の管理の準則」(債権管理三章)等の用例がある。
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紀律
人の行為の規準となる定め又は掟(おきて)。「各議院の紀律を保持する」(国会一一四)、「紀律ある生活」(少院四)などの用例がある。なお、「規律」と字義は同じであるが、法令上は、「紀律」は、特別の権力的な支配関係下にある者についての秩序の維持等を内容とする場合に用いられる。
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規格
物の形状、品質、等級、成分等について設けられる基準。工業標準化法(昭二四法一八五)に基づく日本工業規格、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(昭二五法一七五)に基づく日本農林規格、食品衛生法に基づく食品、添加物の成分の規格等がある。
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規範意識
法、道徳等の規範を守らなければならないという意識。法の場合は「遵法心」、道徳、宗教の場合は「良心」と呼ばれる。法は公的権力を背景とした制裁によってその遵守を強制するものであるが、社会における規範意識に支えられなければその存立は困難となる。
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法意識
法について人々が抱いている規範意識をいう。例えば、何が法的に正しいか、不正であるか、権利・義務の配分はいかにあるべきかなどに関する観念。これを①現実の法規や法制度についての知識・意見・態度と、②抽象的な「法観念」に分析して把握する説もある。
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ー社会規範ー
社会規範
人間の社会生活を規律する規範。社会倫理、習俗、法律などがこれに当たるが、これらは必ずしも内容が異なっているとは限らず、その主たる相異点は立脚する理念の有無や公的な強制の要素の有無に求められる。
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法
社会生活を規律する準則としての社会規範の一種。道徳、習俗、宗教等の他の社会規範との最も大きな違いの一つは、国家的背景をもち、最終的に国家の強制力が法に定める規範の実現を保障している点にある。憲法、法律、政令等の成文法のみならず、慣習法、判例法、条理等の不文法をも含む幅広い概念である。
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法規
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最も広い意味では、法規範一般を指す。
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国民の権利義務に関係する法規範。この観念は、行政機関の組織を定めるような国民の権利義務と直接関係がない法規範と区別する意味で用いられる。現行憲法は、この意味の法規の定立を国会に独占させることを建前としている(四一)。
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一般的、抽象的な意味をもつ法規範。この観念は、具体的な意味をもつ裁判や行政行為と区別する意味で用いられる
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慣習
社会生活の中で反復して行われ、ある程度まで人の行動を拘束するようになった一種の社会規範。その慣習に服する人たちの間で法として考えられるまでに至っているものを「慣習法」といい、そこまで至らないものを「慣習」という(民九二)。
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慣行
慣習として行われていること。慣習とほぼ同義であるが、ある事項について、「慣習」が規範としての面から捉える場合に用いられるのに対し、「慣行」は行為の面から捉える場合に用いられる。例、「団体交渉の慣行」。
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条理
社会生活における根本理念であって、物事の道理、筋道、理法、合理性と同じ意味。社会通念、社会一般の正義の観念、公序良俗、信義誠実の原則等と表されることもある。一般的には法の欠缺(けんけつ)を補うものとして考えられ、裁判事務心得(明八太告一〇三)によれば、成文法も慣習もないときに裁判の基準としてとり上げられるものとされている。民事調停法一条に用例がある。
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公の秩序、善良の風俗
公の秩序は、国家、社会の秩序ないし一般的利益を指し、善良の風俗は、社会の一般的道徳観念を指す。両者を区別する実益は乏しく、全体として社会的妥当性を意味するものとして用いられる。全法律体系を支配する理念を表したもの。略して公序良俗という。民法九〇条は、これに反する法律行為を無効とする旨を規定している。「法の適用に関する通則法」四二条は、準拠法たる外国法を具体的事案に適用した結果が公序良俗に反するときは、その外国法を適用しない旨を規定している。これは、いわば国際私法の原則の例外であり、事案に係る生活事実関係の日本との関連性を踏まえ、法秩序維持のためやむを得ない場合に発動されるべきもので、この場合の公序良俗は厳格に解すべきであるとされる。「遺言の方式の準拠法に関する法律」等では、単に「公の秩序」とのみいっている(八)。なお、民事訴訟法は、外国裁判所の判決の内容及び訴訟手続が日本の公序良俗に反しないことを、その効力を承認する要件の一つとしている(一一八)。
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