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​行為・作為・不作為

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行為

人間の意思に基づく身体の動又は静をいう。刑法の大原則として、犯罪は行為でなければならないから、無意識の反射動作や、抵抗不能の強制の下にされた動作は、行為に当たらず、初めから刑事責任の問題にならない。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

作為

人の行為のうちの特定の行為に着目したとき、当該行為を行わないこと(消極的挙動)を不作為というのに対して、当該行為を行うこと(積極的挙動)
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

不作為

何もしないこと、又は一定の行為をしないこと。例、行政争訟における「不作為についての不服申立て」、「不作為の違法確認の訴え」、刑法における「不作為犯」、民法学における「不作為債務」など。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー行為の体系的な連続ー​

手続​

一般に、事を行う順序、方法をいうが、法令上は、一定の目的の実現に向けられる複数の行為の体系的な連続をいう。例、「法律の定める手続」(憲三一)、「訴訟手続」(民訴一二四①)等。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー法律行為・準法律行為・事実行為​ー

​​法律行為

法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為。現在では、私法上の法律関係は、原則として当事者の意思によって規律される(私的自治の原則)ので、主として当事者の意思表示が法律行為の成立する要件となるが、質権設定契約における物の引渡しのように事実行為も要求される場合がある(民三四四)。意思表示の結合の態様に応じて、単独行為、契約、合同行為に分けられる。なお、法律行為が行為者の希望したとおりの効果を生ずるためには、強行法規や公序良俗に反しないこと、意思の欠缺(けんけつ)又は瑕疵(かし)がないことなどが必要である。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

なお、法律行為には、法令上定義規定がなく、債権法改正の際、以下のように、定義規定を設けることも議論されましたが、合意には達せず、見送られました。

(1) 法律行為は,法令の規定に従い,意思表示に基づいてその効力を生ずるものとする。

(2) 法律行為には,契約のほか,取消し,遺言その他の単独行為が含まれるものとする。

(法務省民事局参事官室「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明(法務省,2013年)1頁参照)

意思表示

一定の法律効果の発生を欲する意思を外部に対して表示する行為。契約の申込み・承諾、遺言等がその例。意思表示を不可欠の構成要素として「法律行為」の概念がある。民法では意思表示法律行為を混用している。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

準法律行為
広義には、私法上の法律効果を発生させる行為のうち法律行為以外のもの。法律的行為ともいう。一定の意識内容の表現であることを本質とするもの(表現行為といい、意思通知観念の通知及び感情の表示が含まれる)と、行為そのものとして法律効果を認められるもの(非表現行為又は事実行為といい、先占、遺失物拾得、事務管理等が含まれる)とに分けられ、狭義には表現行為のみをいう。表現行為には意思表示の通則(行為能力、錯誤、代理等に関する規定)が類推適用される。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

事実行為

  1. 人の意思に基づかないで法律効果を発生させる行為。例えば、他人の動産に工作を加えた場合は、原則として、その加工物の所有権は、加工者ではなく、材料の所有者が取得するという法律効果を生ずる(民二四六)。この法律効果は加工者の意思ではなく、その工作という行為自体から発生するので、工作は事実行為であるとされる。

  2. 行政機関の行為であって法律上の効果を有しないもの。公権力の行使に当たる事実行為は行政救済の対象となる(行訴三②、行審二等)。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー法律行為の分類​ー

①意思表示の態様を基準とした分類

単独行為

法律行為の要素である意思表示の態様を基準として分類した場合の概念の一つで、行為者の単独の意思表示を構成要素とする法律行為。取消し、相殺(そうさい)、遺言、所有権放棄がその例。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
 

契約

相対立する二つ以上の意思表示の合致(合意)によって成立する法律行為。同じく意思表示を要素とする法律行為であっても複数の意思表示からなる点で単独行為と異なり、相対立する意思表示からなる点で合同行為と異なる。広義では、複数の意思表示によって成立する法律行為を広く指し、合同行為も含めていうことがある(例、組合契約(民六六七))。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

合同行為

多数当事者による同一方向の意思表示を構成要素とする法律行為。一般社団法人の設立行為はその例。単独行為及び契約に対する観念。数個の意思表示を必要とする点で単独行為と異なり、同一方向の意思表示を要素とする点で契約と異なる。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

②一定の方式の有無による法律行為の分類ー

様式行為

一定の事項を記載した書面によるとか、所定の手続によって届出をするなど、法令に定める一定の方式に従って行わないと不成立又は無効とされる法律行為。例えば、遺言、婚姻・縁組、手形の振出し、定款の作成等がある。法律によって書面の作成が要求される場合でも、書面作成が勧奨されるにとどまり、効力発生要件でないと解されるときは、要式行為ではない。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

​不様式行為

書面によるというような一定の方式によることが必要とされていない法律行為。法律行為は、一定の方式によると法律に定められているもののほかは、不要式行為である。要式行為に対する言葉。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

③原因が法律行為に与える影響の有無による分類ー

​無因行為

財産上の出捐(しゅつえん)を行う原因(例えば、売買契約)が無効であっても、その出捐行為(例えば、売買代金支払のための手形の交付)の効力には影響を及ぼさないとされている場合の、その出捐行為。手形のように流通するものについては、取引の安全の保護のために、その原因が無効であっても、手形行為自体は有効であるとされている。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
 

​有因行為

財産上の出捐(しゅつえん)を行う原因が無効であればそれに伴って無効となるような法律行為のこと。無因行為に対する語。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

④給付に対する代償の有無による法律行為の分類ー

​有償行為

法律行為のうち、それによる一定の給付に対する代償(対価)が与えられるもの。そのほとんど全てが、売買、賃貸借のような有償契約である。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

​無償行為

法律行為のうち、一方の給付に対して代償(対価)が与えられないもの。無償行為は、無償契約よりも広い概念で、遺贈のような無償の単独行為も含まれる。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

⑤生前の前後による法律行為の分類

​生前処分(生前行為)

​行為者の生前に効力が発生する法律行為。生前行為ともいい、遺言、死因贈与のような死因処分に対する。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

​死因処分

行為者の死亡によって効力が生ずる法律行為。遺言や死因贈与がその例。死因処分、死後処分ともいう。生前行為に対する概念。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

⑥法秩序により是認されるか否かの分類

​適法行為

広義には、法令にかなった行為のこと。狭義では、民法上、法律事実を分類する場合、法秩序から見て是認される法律事実をいい、これに対し、法秩序に反する法律事実を違法行為と呼ぶ。この意味での適法行為には、意思表示と準法律行為があり、違法行為には、債務不履行と不法行為がある。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

違法行為

一般的には、法秩序から是認されず、何らかの法律上の制裁を科される行為をいう。
私法においては、法技術的には、法律事実の分類の一つで、債務不履行不法行為とをいう。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー民法上の違法行為の分類ー

​債務不履行

債務者が債務の本旨に従った履行をしないこと。履行遅滞、履行不能、不完全履行の三類型に分かれる。その主な効果は、履行が可能な場合にその強制履行を求め、損害賠償を請求し、契約の解除をすることができることである。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

不法行為

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、これによって他人に損害を生じさせる行為。一般の不法行為(民七〇九)と、その特則としてより重い責任の認められる特殊の不法行為(責任能力のない者の行為に対する監督義務者の責任、使用者責任、工作物責任、動物責任)(七一五~七一八)とがある。不法行為の効果として、加害者は、財産的損害のほか精神的損害を賠償しなければならない(七一〇・七一一)。一般の不法行為の成立要件には、主観的要件(行為が故意又は過失に基づくこと、加害者に責任能力があること)と客観的要件(加害行為の違法性と被侵害利益との態様を比較して権利侵害があること、行為と損害との間に因果関係があること)とがある。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー管理行為・処分行為ー

管理行為

財産を保管してその経済上の用途に適させる行為で、保存行為(財産の滅失、損壊を防ぎ、その現状を維持する行為)、利用行為(財産をその性質に従って有利に利用する行為)及び改良行為(財産の性質を変えない範囲内でその価値を増加する行為)をいう。処分行為に対する語。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

処分行為

管理行為に対する観念で、財産の破棄、消滅のようにその現状又は性質を変える事実的処分行為(家屋を取り壊すなど)と財産権の変動を直接生じさせる法律的処分行為(家屋の売却、株式の質入れなど)とを含む。民法上この観念は、行為能力や権限等に関して用いられている(五・一二九等)。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

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