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​身体・死体・遺骨

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身体

人間のからだ。

法上、正当な理由なしには身体的な活動を拘束されないという身体の自由(人身の自由)が保障されている(憲法18条、31条等)。身体に対する刑罰(身体刑)は、残虐な刑罰な禁止に当たると考えられている(憲法36条)。

民法上は、生命、自由、名誉と並んで、不法行為となる権利侵害の保護対象となり(民法709条、710条等)、刑法上、人の身体を傷害した者は、傷害罪等の処罰の対象となる(刑法204条等)。

脳死した者の身体

脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体(臓器の移植に関する法律第6条2項)。

臓器移植法上、死体に含まれ、臓器の摘出ができるる(同法第6条1項)。

 

死体

死亡した人の身体。

刑法では、死者に対する崇敬の感情を保護するため、死体を損壊、遺棄、領得する行為が処罰される(刑法190条)。死胎も人の形態を備えている限り死体とされる。

また、墓地、埋葬等に関する法律、死体解剖保存法では、妊娠四箇月以上の死胎は死体とされる(墓地、埋葬等に関する法律2条1項、死体解剖保存法1条)。

死児

死児とは,出産後において心臓膊動、随意筋の運動及び呼吸のいづれをも認めないもの(死産の届出に関する規程2条)。妊娠第四月以後における死児の出産は「死産」として、届出が必要である(同法3条)。

変死体

変死体とは,変死者又は変死の疑いがある死体(警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律4条2項、検視規則1条)。変死者又は変死の疑いがある死体について、検察官は、検視をしなければならない(刑事訴訟法229条1項)。検視を経ないで変死者を葬った者は、処罰される(刑法192条)。

変死者

不自然死の疑いがあり、かつ、犯罪による死亡の疑いのある死体。

変死の疑いのある死体 

不自然死の疑いがあり、かつ、犯罪によるものかどうか不明なもの。

遺骨

死亡した人間の骨。

刑法190条にいう「遺骨」とは、死者の祭祀・記念のため保存し、保存すべきものをいい、遺族その他遺言を処分する権限を有する者が、風俗慣習に従って正当に処分したものを含まない(大判明43年10月4日刑録16輯19巻1608頁)。

遺骨は、墓地以外のところに埋めてはいけない(墓地、埋葬等に関する法律第4条)。尚、同法は、散骨墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為(散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け))については、規制していない。


 

【参照条文】

憲法第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

憲法第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

憲法第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 

(不法行為による損害賠償)

第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

(傷害)

刑法第204条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

(死体損壊等)

第190条 死体遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

(変死者密葬)

刑法第192条 検視を経ないで変死者を葬った者は、十万円以下の罰金又は科料に処する。

 

墓地、埋葬等に関する法律第2条① この法律で「埋葬」とは、死体妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。

第四条① 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

 

死体解剖保存法第1条 この法律は、死体妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)の解剖及び保存並びに死因調査の適正を期することによつて公衆衛生の向上を図るとともに、医学(歯学を含む。以下同じ。)の教育又は研究に資することを目的とする。

 

昭和二十一年厚生省令第四十二号(死産の届出に関する規程)第2条 この規程で、死産とは妊娠第四月以後における死児の出産をいひ、死児とは出産後において心臓膊動、随意筋の運動及び呼吸のいづれをも認めないものをいふ。

第3条 すべての死産は、この規程の定めるところにより、届出なければならない。

 

(臓器の摘出)

臓器の移植に関する法律第6条① 医師は、…移植術に使用されるための臓器を、死体脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。

② 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

 

(死体発見時の調査等)

警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律第4条② 警察署長は、前項の規定による報告又は死体に関する法令に基づく届出に係る死体(犯罪行為により死亡したと認められる死体又は変死体変死者又は変死の疑いがある死体をいう。次条第三項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、その死因及び身元を明らかにするため、外表の調査、死体の発見された場所の調査、関係者に対する質問等の必要な調査をしなければならない。

 

(この規則の目的)

検視規則第1条 この規則は、警察官が変死者又は変死の疑のある死体(以下「変死体」という。)を発見し、又はこれがある旨の届出を受けたときの検視に関する手続、方法その他必要な事項を定めることを目的とする。

 

刑事訴訟法第229条① 変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。

散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)2 (1) 散骨 墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為 

​【参考文献】

法令用語研究会編『法律用語辞典』(有斐閣,第4版,2012年)「身体」、「死体」、「変死者」、「遺骨」

​高橋和之他編『法律学小辞典』(有斐閣,第5版,2021年)「身体刑」

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