毀損・毀棄・廃棄・損壊・破壊・滅却・汚染
毀損
こわすこと。傷をつけること。有形物に損傷を与える場合だけでなく、無形物たる名誉、信用等を侵害することについても用いられる(刑二三〇・二三三)。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
毀棄
物の効用を滅失、減少させる行為。物理的破壊がその典型であるが、隠匿なども含まれる。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
廃棄
多義的であるが、①物を、その本来の用途に供し得ないようにして捨てることの意味で用いられることが多い(例、刑訴一二一②)。その他②提案などが取り上げられず、その存在を失わせられることを意味する場合(例、国会五四)や、③条約において、一方的意思表示により当該国と他の当事国との条約関係を終了させることを指す場合もある。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
損壊
物を損し、又は壊し、その用法に従って使用することを事実上不可能にする行為。物理的に物を破壊し、又はその形態を変更することは必ずしも必要ではなく、およそ物をその本来の目的に使用することができない状態に至らしめる行為を含む。この点で破壊よりやや広い概念とされる。外国国章損壊罪(刑九二)、建造物損壊罪(刑二六〇)、器物損壊罪(刑二六一)等に定める行為。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
破壊
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物の実質を害してその本来の機能、効用の全部又は一部を失わせることをいうとされている。例、「水門を破壊し」(刑一二三)、「現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者」(一二六①。なお、本項の破壊については、人の生命・身体に危険を及ぼすに足りる程度のものであることを要する等の説もある)。類似の語に「損壊」がある。
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特定の制度等について、正当な手続によらないでこれを壊し、機能しないようにすること。例、「日本国憲法又は…政府を暴力で破壊する」(国公三八)等。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
滅却
物理的にある物の存在を失わせること又はその物が使用できないように捨てること。例、「腐敗し、若しくは変質し、又は他の外国貨物を害するおそれがある等の事情によりこれを滅却する…」(関税四五②)。
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汚染
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汚れに染めること。法令上は、「毀損」とともに用いられることがある(郵便三〇等)。この場合、毀損がその形状又は構造を破壊することを主として意味するのに対し、汚染は、そのものの表面の状態、色彩について変更を加える結果となるものを主に想定している。
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汚れて汚くなること。環境、公害関係法令に多く用いられる(環境基二、大気汚染一等)。
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汚すこと。人の飲料に供する浄水、水道の水又はその水源を汚染し、これを使用することができないようにすることは、刑法の浄水汚染罪(一四二)又は水道汚染罪(一四三)に当たるが、この汚染には水の清潔状態を失わせる行為が全て含まれる。
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遺棄
要扶助者を、保護された状態から保護のない状態におくこと。なお、刑法の遺棄罪(二編三〇章)では広狭二つの意で用いられており、狭義には、保護された状態から保護されない状態に場所的に移転させることを意味するのに対し、保護責任者遺棄罪(二一八)における「遺棄」は広義のそれで、保護されない状態に置去りにすることをも含むとされている。
死体遺棄罪(刑一九〇)にいう「遺棄」は、埋葬と見られる方法によらないで死体を捨て置くこと。一般には場所的移転を伴うが、死体の葬祭を営むべき義務ある者については、そのまま放置する場合を含む。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
置去り
被遺棄者を危険な場所等に残して立ち去る行為。安全な場所から危険な場所に移す「移置」が作為による遺棄であるのに対し、「置去り」は不作為による遺棄である。置去りは、単純遺棄罪(刑二一七)の遺棄には含まれず、保護責任者遺棄罪(二一八)の遺棄にのみ該当するとするのが通説である。
遺留
占有者がその占有物を置き忘れ、又は自ら置き去りにすること。例、「被告人その他の者が遺留した物」(刑訴一〇一)。
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